序文

「人間の発想は、記憶と類推の結びつき」

2009年/当時19歳の僕はこの言葉にひどくシビれたのだった。

どうやら今、世界は変わろうとしている。

きっと今まで職業としていたものも変わる。

娯楽としていたものも変わる。

ただどう変わるかは、僕の頭じゃ今のところわからないのだった。

今日も日が暮れてきたなと換気扇に向かい、煙草に火をつけると、窓辺で19歳の僕があぐらをかいてクイック・ジャパンを読んでいた。

覗いてみると、三木聡さんのインタビューだ。

三木さんの破顔一笑とともに「人間の発想は、記憶と類推の結びつき」という文字が目に入った。

そうだ。類推だけではだめなのだった。

温故知新。記憶の幹を太くして今を見つめる。

自らの記憶はすなわち自らの構成要素であるはずだ。

青年が終わり、中年になる前に、

記憶に従って自分を分解してみたいと思ったのだ。

不器用で不格好な過去を、未来で新しい「当たり前」を過ごしている僕が読み返したとき、滑稽だなと、笑えていますように。

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